【感想・レビュー】漫画『ひとりでしにたい』1巻|「どう生き、どう死にたいか」を静かに問う一冊

人生100年時代。「老後が心配」「このまま独身だったらどうなるの?」──そんな漠然とした不安を抱えたことがある方に、ぜひ読んでほしい漫画があります。

今回ご紹介するのは、カレー沢薫さん作画・ドネリー美咲さん原作による社会派ヒューマンドラマ『ひとりでしにたい』第1巻です。

孤独死の取材が、人生の転機に

物語の主人公は、35歳・未婚・出版社勤務の間宮いずみ。仕事にも彼氏にもそれなりに恵まれているように見える彼女ですが、心の奥では「このままでいいのか?」という焦燥感を抱えています。

そんな彼女がある日、孤独死した高齢者の部屋を取材することになり、「人はどう死ぬのか」「自分はどう死にたいのか」という現実的な問いに向き合い始めるところから物語は始まります。

結婚していないと不安? それって本質なの?

この作品の面白さは、「結婚しないと孤独死するのか?」という単純な構図ではなく、「自分の生き方に納得して死ねるか?」という本質的なテーマに踏み込んでいるところ。

ただ不安をあおるのではなく、「老後や死に方を考えることは、実は“今”をどう生きるかにつながるんだ」という気づきを、静かに、でもしっかりと読者に伝えてくれます。

社会問題を背後に感じさせるリアリティ

核家族化、少子化、都市部での孤立…。作中に直接語られることは少ないものの、物語の背景には現代日本が抱える構造的な課題が透けて見えます。

そしてそれが、決して“他人事”ではないことを、主人公いずみの目線でじわじわと実感させてくる。まさに、フィクションでありながらドキュメンタリーのようなリアリティが光る一冊です。

表情と間(ま)で伝える心情描写が秀逸

作画は決して派手ではありませんが、主人公の微妙な感情を表情や空気感で伝える表現力が非常に高いです。

特に主人公の顔芸(?)が派手!(と言ってよいのか…)テーマは落ち着いているんですが、キャラクターの表情や動きが面白くて笑ってしまいますり

中でも、無理に笑って話を合わせるシーンや、自分の不安を言葉にできずに飲み込む場面には、多くの読者が「これ、自分だ」と共感せずにはいられないでしょう。

私も読みながら何度も共感しました。

読み終えたあとに、自分の“これから”を考えたくなる

第1巻を読み終えると、「自分はどう死にたいか?」よりも、「どう生きて、どんな人と関わっていきたいのか?」という問いが自然と浮かんできます。

『ひとりでしにたい』は、人生の折り返しに差し掛かった30代〜40代の方に特に刺さる内容ですが、どの年代の人にも「自分の人生を考えるきっかけ」になる作品です。

まとめ|“死”を遠ざけず、日常から見つめる一冊

『ひとりでしにたい』第1巻は、「死」や「老い」という重たいテーマを、重すぎず、けれど決して軽くもなく描き切った秀作です。

これからの人生に漠然とした不安を抱えている方、「ひとり老後」が頭をよぎる方は、ぜひ手に取ってみてください。

きっと、今のあなたにとって必要な“問い”が見つかるはずです。

ABOUTこの記事をかいた人

1982年生まれ。 現在は神道に関わる仕事に就き、多くの生死を見つめる。 あるとき「父が帰ってこない」と母から電話を受けて、騒ぎになった。 父は81歳で認知が始まっていた。警察に連絡し捜索が始まる直前、ふらりと帰ってきてことなきを得た。 物忘れが激しく、いずれ僕の名前も忘れるだろう。 終活を始めるのは、今しかないと思い、両親とともに様々な終活を開始。 家族は、妻と6歳の長男。 趣味は小説執筆、映画鑑賞など。