「遺言書って自分で書いても大丈夫?」
「公正証書って費用がかかるって聞いたけど、本当に必要?」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。
遺言書は、自分の大切な財産や想いを、亡くなった後にきちんと伝えるための法的な文書です。
特に相続トラブルを防ぐためには、内容だけでなく、形式的にも正しく作ることがとても重要になります。
この記事では、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いや、それぞれのメリット・注意点、実際の書き方まで、わかりやすく解説していきます。
目次
遺言書とは?どんなことが書けるの?
遺言書は、亡くなった後の財産の分け方や家族への想いを記すものです。
内容によっては、法律的な効果が発生します。
たとえば、次のようなことを遺言で指定することができます。
- どの財産を誰に相続させるか(相続分の指定)
- 相続人以外の人へ財産を贈る(遺贈)
- 非嫡出子の認知
- 遺言執行者の指定
- 特定の相続人の相続権を取り消す(廃除)
ただし、形式に不備があると無効になることもあるため、正しいルールに沿って書くことが重要です。
自筆証書遺言とは?自分で書く遺言書の基本ルール
自筆証書遺言は、名前の通り、自分の手で書く遺言書です。
紙とペンがあれば作成でき、費用もほとんどかからないため、多くの方がまず検討する形式です。
書くときは、以下の点に注意しましょう。
まず、全文を手書きで書く必要があります。財産の一覧(たとえば預金口座や不動産の明細)については、パソコンやコピーでも構いませんが、それ以外の部分、たとえば「誰に何を遺すか」「氏名」「日付」などはすべて自筆でなければいけません。
また、日付は「令和7年6月13日」のように、いつ書かれたかを特定できるように書きましょう。署名と押印(印鑑)も忘れずに。押印は実印が望ましいですが、認印でも有効です。
書き終えたら、自宅に保管することもできますが、紛失や改ざんのリスクがあります。そのため、法務局が行っている「自筆証書遺言書保管制度」を利用するのがおすすめです。この制度を使えば、遺言書を安全に保管してもらえるうえに、相続開始後の「家庭裁判所での検認」も不要になります。
公正証書遺言とは?法律の専門家が関わる安心な方法
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書のことです。
法律のプロが内容を確認しながら作ってくれるため、自筆のような書き間違いや形式のミスが起こりにくく、非常に信頼性の高い方法といえます。
この遺言書は、本人が口頭で意思を伝え、公証人が文面を作成します。
作成には証人が2人必要になりますが、公証役場にお願いすれば証人を紹介してもらえることもあります。
作成が終わると、原本は公証役場で保管され、本人には正本と謄本が渡されます。
保管面でも非常に安心で、万が一自宅の書類がなくなっても、再発行が可能です。
さらに、公正証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きをしなくてよいのも大きなメリットです。
遺族がすぐに遺言に基づいて相続手続きを進められるため、相続人にとっても負担が少なく済みます。
費用は財産の額によって異なりますが、たとえば遺産が1,000万円程度の場合で5〜6万円ほどが相場です。
証人を依頼する場合は、その分の費用が追加されることもあります。
自筆と公正証書、どちらが自分に合っている?
「結局、どちらの遺言書を作ればいいの?」と迷う方も多いと思います。
まず、「なるべく費用をかけずに、自分で手軽に書きたい」という方には、自筆証書遺言が向いています。
ただし、法律上のルールに従わないと無効になってしまう可能性があるため、事前に十分な確認が必要です。
特に複雑な財産構成や、家族間のトラブルが懸念される場合には注意が必要です。
一方、「少し費用がかかっても、法的にしっかりした遺言書を作りたい」「万が一に備えて、確実な保管と執行を希望したい」という方には、公正証書遺言がおすすめです。
とくに相続人が複数いるケースや、不動産・会社経営などを含む複雑な財産をお持ちの方には、公正証書の方が安心といえます。
遺言書はいつ作るべき?何度でも書き直せる?
遺言書は「高齢になってから」と思われがちですが、病気や事故は突然訪れます。
以下のようなタイミングで、一度作成を考えてみるのがおすすめです。
- 結婚・離婚をしたとき
- 子どもが生まれたとき
- 不動産や多額の資産を取得したとき
- 家族構成に変化があったとき
- 認知症の心配が出る前
なお、遺言書はいつでも何度でも書き直すことができます。
最新の日付のものが有効となるので、生活の変化に応じて内容を更新していくのが理想的です。
まとめ|自分に合った遺言書の形式で、想いを正しく伝えよう
遺言書は、単に「お金の分け方」を決めるだけでなく、「家族に想いを伝える最後の手紙」とも言えるものです。
自筆証書遺言は手軽に始められる反面、形式のミスがあると無効になるリスクがあります。
一方、公正証書遺言は費用はかかりますが、確実性・安全性が高く、トラブルを防ぎたい方には非常におすすめです。
どちらの形式が自分に合っているかを考えながら、少しずつ準備を始めてみてください。
まずはエンディングノートで気持ちを整理するところからでも大丈夫です。
あなたの意思が、きちんと大切な人に届くよう、正しい方法で「遺言」を残していきましょう。