墓じまいに関わる法律とは?トラブルを避けるための基礎知識と注意点

近年、少子高齢化やライフスタイルの変化により、「墓じまい」を検討する人が増えています。

しかし実際に進めようとすると、

法律的に許可は必要なの?

勝手にお墓を移していいの?

手続きや届出はどこにするの?

…といった法的な疑問や不安が出てくる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、「墓じまい」にまつわる法律や行政手続き、トラブルを防ぐためのポイントをわかりやすく解説します。

墓じまいとは法律上「改葬(かいそう)」

まず、墓じまいは法律上、「改葬」として扱われます。

これは、遺骨を今のお墓から別の場所へ移す行為のことを指します。

墓じまい=「お墓を閉じて、遺骨を他へ移すこと」であり、

このとき、行政への届け出や許可が必ず必要になります。

墓じまいに関わる主な法律

墓じまいの際に関わってくる法律は、主に以下の2つです。

■ 1. 墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)

「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)」は、

遺体の埋葬、火葬、墓地の設置・管理などを規定する法律です。

この中の「第5条」には、以下のような文言があります。

埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない。

つまり、改葬(墓じまい)を行うには、必ず市区町村長の許可が必要ということです。

勝手にお墓を撤去したり、遺骨を移動させることは法律違反になります。

■ 2. 民法(親族間の合意・承継)

墓地や遺骨に関する法律は、民法の「親族間の関係」や「財産・管理の権利」にも関わってきます。

たとえば、

墓地の所有権(名義人)は誰か 改葬することに親族が同意しているか 離檀や改葬後の供養をどうするか

といった部分が、民法上の権利や責任の問題になるケースもあります。

墓じまいに必要な手続きと法的ポイント

では実際に、墓じまいを法律に沿って行うには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

以下に、基本的な流れと、法律上注意すべき点を紹介します。

1. 改葬先を決める(新しい納骨先)

まず最初にすべきは、遺骨の移転先(改葬先)を決めることです。

改葬許可を得るには、「移転先の受け入れ証明書」が必要になります。

たとえば以下のような施設です。

  • 永代供養墓
  • 納骨堂
  • 樹木葬
  • 寺院の墓地
  • 公営霊園

改葬先が決まっていないと、行政から許可が下りないため注意が必要です。

2. 現在の墓地管理者から「埋蔵証明書」をもらう

今あるお墓の管理者(霊園・寺院など)から、

「ここに遺骨が埋蔵されている」という証明をもらう必要があります。

この証明書は、改葬許可申請に必須となる書類です。

3. 改葬許可申請書の提出(市区町村役場)

次に、市区町村の窓口に「改葬許可申請書」を提出します。

提出には通常、以下の3点が必要です。

  • 改葬許可申請書(様式は役所で入手)
  • 現在の墓地管理者による埋蔵証明書
  • 新しい納骨先の受け入れ証明書

これらを揃えて提出し、市区町村長の許可を得ると、「改葬許可証」が発行されます。

4. 離檀手続き(寺院墓地の場合)

寺院にお墓がある場合、「離檀(りだん)」という手続きが必要になります。

これは、檀家としての関係を終了させる手続きのこと。

この際に注意すべき法的ポイントは、

  • 住職への挨拶と事情説明
  • 離檀料(お布施)を求められる可能性
  • 言い争いや拒否によるトラブル

離檀料の法的義務はありませんが、

「慣習的な支払い」「感謝の気持ち」として支払うケースが多いのが現実です。

5. 墓地の撤去・更地化と返還

墓じまいでは、お墓の撤去工事を行い、墓地を更地に戻して返還することが求められます。

これには、石材業者への依頼や費用が発生します。

法律上、撤去後の管理契約解除や、残置物の確認なども必要です。

墓じまいでよくある法律トラブルと注意点

墓じまいに関連して起こりやすいトラブルや法的な注意点も確認しておきましょう。

● 親族間の同意が得られない

民法では、お墓は「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」が管理しますが、遺族間でトラブルになるケースもあります。

「勝手にやられた」「事前に相談がなかった」といった理由で、

感情的な対立に発展することも。

👉 事前に親族としっかり話し合い、同意を得ることが大切です。

● 無許可で遺骨を移動すると法律違反に

市区町村の許可を得ずに遺骨を移動すると、

墓埋法違反となり、刑事罰の対象になる可能性もあります。

たとえ家族の遺骨であっても、自己判断での移動は厳禁です。

● 離檀料トラブル(高額な請求など)

一部の寺院では、離檀に際し高額な費用(数十万円以上)を請求されることもあります。

法的には支払い義務はありませんが、

誠意を持って話し合い、必要に応じて第三者機関(消費生活センターなど)に相談を。

墓じまいを法律的に進めるコツまとめ

  • 改葬先を決めて、受け入れ証明書をもらう
  • 現在の墓地管理者から埋蔵証明書をもらう
  • 役所に改葬許可申請書を提出する
  • 離檀が必要な場合は、丁寧に相談・手続き
  • 親族との話し合いと同意を大切に

まとめ|法律を守って、気持ちよく墓じまいを

墓じまいは、「お墓を閉じるだけ」ではありません。

法律に沿った適切な手続きと、関係者との丁寧なやりとりが不可欠です。

法的な手続きを知っておけば、トラブルを回避しながら、

自分と家族にとって納得できる形で進めることができます。

「まだ早いかも」と思っても、準備は早すぎることはありません。

元気なうちに、正しい知識をもとに一歩を踏み出してみませんか?

ABOUTこの記事をかいた人

1982年生まれ。 現在は神道に関わる仕事に就き、多くの生死を見つめる。 あるとき「父が帰ってこない」と母から電話を受けて、騒ぎになった。 父は81歳で認知が始まっていた。警察に連絡し捜索が始まる直前、ふらりと帰ってきてことなきを得た。 物忘れが激しく、いずれ僕の名前も忘れるだろう。 終活を始めるのは、今しかないと思い、両親とともに様々な終活を開始。 家族は、妻と6歳の長男。 趣味は小説執筆、映画鑑賞など。