家族信託のメリットとは?高齢化社会で注目される新しい財産管理のカタチ

「将来、認知症になったら財産の管理はどうなるの?」
「親が元気なうちに相続や介護の準備をしたいけど、何から始めればいいのかわからない…」

そんな悩みに応える仕組みとして、いま注目されているのが「家族信託」です。

まだ聞き慣れない言葉かもしれませんが、家族信託は「これからの時代に必要不可欠な財産管理の方法」として、多くの専門家も勧める制度です。

この記事では、家族信託の仕組みや具体的なメリットを、わかりやすくご紹介します。


1. 家族信託とは?まずは基本から

家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を託す仕組みのこと。
「信託」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際には次のような構成になっています。

  • 委託者:財産を預ける人(多くは親)
  • 受託者:預かった財産を管理する人(多くは子ども)
  • 受益者:財産の利益を受け取る人(通常は委託者自身)

つまり、親がまだ元気なうちに「この財産は将来こう使ってほしい」と意思を明確にし、子どもに管理・運用を任せることができる仕組みです。

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2. 家族信託の主なメリット

家族信託のメリットは多岐にわたります。ここでは代表的な6つをご紹介します。


メリット① 認知症による財産凍結を防げる

日本では高齢者の認知症が年々増加しており、将来的に5人に1人が認知症になるとも言われています。

認知症になると「判断能力がない」とされ、たとえ本人名義の財産であっても売却や運用ができなくなります。
成年後見制度を利用するという方法もありますが、柔軟な運用が難しく、費用や手間もかかります。

一方、家族信託であらかじめ子どもに財産管理を任せておけば、認知症になった後も、家族がスムーズに対応できます。


メリット② 柔軟な財産の使い方が可能

家族信託では、財産の管理・処分・運用に関してかなり自由な設計が可能です。

たとえば、

  • 「親が亡くなったら、まずは妻へ。その後に長男へ」といった順序の指定
  • 「不動産は売却せず、孫が成人するまでは管理して使わせる」といった指示
  • 「自分の老後資金に必要な分だけ取り崩して使う」

といった、自分の意思を反映した詳細なプラン設計ができます。


メリット③ 相続対策・遺産分割トラブルの防止に

家族信託は、遺言のように「自分の死後に財産をどう分けるか」だけでなく、生前から財産の流れを決めておけるのが特徴です。

たとえば、不動産を特定の子どもに相続させたい場合、信託契約でその意向をはっきりと残すことで、他の相続人とのトラブルを防ぐことができます。

また、遺留分の問題に配慮しながら設計すれば、法的なリスクも回避できます。


メリット④ 成年後見制度よりも自由度が高い

前述のように、判断能力がなくなると成年後見制度を使うケースが多くなります。
しかし後見制度には、以下のようなデメリットがあります。

  • 毎年の報告義務がある
  • 財産の運用が制限される(基本的に“守る”だけ)
  • 家族が後見人になれない場合、第三者が関与する

それに比べて家族信託は、契約時に決めた内容に沿って、家族だけで柔軟に財産を管理できます。


メリット⑤ 不動産の共有問題を解消できる

不動産は、相続によって複数の名義になりやすく、売却や建替えなどの決定が難しくなりがちです。

家族信託で不動産の管理権限を一人の受託者(例:長男)にまとめておけば、相続後もスムーズな意思決定が可能になります。


メリット⑥ 障がいのある子どものための「親なきあと対策」にも有効

親が亡くなった後に、障がいを持つ子どもの生活や財産管理をどうするかという問題は深刻です。

このような場合も、家族信託で信頼できる親族を受託者としておけば、子どもの生活を安定的に支援する仕組みが作れます。


3. 家族信託の活用事例

実際にどんな場面で家族信託が使われているのか、具体的な事例を見てみましょう。


事例1:認知症対策としての家族信託

80代の父親が、賃貸アパートを所有。将来の認知症に備え、息子を受託者とする家族信託契約を締結。
父の判断力が低下しても、息子がアパートの管理・修繕・売却を適切に行えるようになった。


事例2:相続トラブル回避のための信託

子ども2人のうち1人が遠方に住んでいて不動産管理が難しいため、管理能力のある長男を受託者とし、家を引き継がせる信託契約を作成。
遺言よりも早期に合意形成ができ、トラブルを未然に防げた。


4. 家族信託の注意点

家族信託には多くのメリットがありますが、以下の点に注意が必要です。

  • 信託契約書の作成には法律の専門知識が必要
  • 受託者に信頼性と責任感が求められる
  • 相続税対策としては万能ではない(節税効果は限定的)

そのため、司法書士や行政書士、弁護士、税理士などの専門家に相談しながら進めるのが安心です。


5. まとめ|「家族を信じて託す」という安心のカタチ

家族信託は、財産の“名義”ではなく“管理と運用の権利”を信頼できる人に託すことで、将来への不安を減らす新しい仕組みです。

  • 認知症になる前に備えたい
  • 相続や不動産の管理を円滑にしたい
  • 自分の意思をしっかり家族に伝えたい

そんな方にこそ、家族信託はぴったりの選択肢です。

「まだ早い」と思っていても、準備は元気なうちにしかできません。
あなたの大切な財産と家族を守るために、今こそ家族信託という選択肢を検討してみてください。



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ABOUTこの記事をかいた人

1982年生まれ。 現在は神道に関わる仕事に就き、多くの生死を見つめる。 あるとき「父が帰ってこない」と母から電話を受けて、騒ぎになった。 父は81歳で認知が始まっていた。警察に連絡し捜索が始まる直前、ふらりと帰ってきてことなきを得た。 物忘れが激しく、いずれ僕の名前も忘れるだろう。 終活を始めるのは、今しかないと思い、両親とともに様々な終活を開始。 家族は、妻と6歳の長男。 趣味は小説執筆、映画鑑賞など。